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何か役立てば・・・・

[2002.10.29] [sawa 近況報告]

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メールでよく「チェコでは人形劇がとても盛んだと聞いたのですが、
実際にどんな様子なのですか?」とか「どうして盛んなのですか?」
「日本と比べてどうですか?」といった質問をいただくのですが、
渦中にいるせいか、自分の仕事で手一杯なためか、よくわかりません。
ただ、以下のような返信をある方にお送りしたことはあります。
そういった疑問をお持ちの方々に、何か役立てば・・・・。
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今、プラハには50以上の劇場があり、主だった小屋には、毎日ほぼ満員のお客が入っています。
オペラ、ドラマ、ダンス、人形劇は基本的にボーダレスであり、
役者や演出家はさまざまなジャンルで仕事をしています。
入場料金は400円〜500円程度で、日本の物価の3分の1ぐらいが目安のチェコでも、
やはり安い料金設定と言えます。
行政からの援助もありますが、需要が多いので、安く供給できる、という経済の基本だと思います。
また、チェコ語にはロウトカーシュ、という単語があり、一番近い邦訳は「人形劇家」だと思うのですが、
ぼくがここでこの職名を名乗ると、たいてい誰でもニコニコ対応してくれます。
以前、何かの取材で、日本にこのような立場のアーティスト、あるいは文化のジャンルがあるとすれば
何だろうか?とたずねられた事があります。
ぼくはちょうど日本のセル・アニメ、コミック文化がチェコの小劇場・人形劇文化にあたると思う、
と答えました。
日本の質・量ともにひじょうにすぐれたマンガ、コミックが、
世界を席巻するほどの勢いに満ちていることはご存知の通りです。
チェコは国が小さいこと(北海道ぐらいの面積に東京都の人口が住んでいます)、
もともと芝居や音楽好きな国民であったことから、89年の革命後に起こった高度経済成長と、
それにともなうマス・メディアの発達の中で、住民が集う劇場文化が駆逐されずに生き残った、
という状況があると思います。
自分の家のわりとそばに劇場があり、安く生の芝居が見られ、
知り合いと劇場内のパブでビールが飲めれば、たいてい人は集(つど)ってしまうのです。
ひとつの都市にかならずオペラ・ハウス、ドラマ劇場、人形劇場がそれぞれ公立であり、
その他に若者が運営する小劇場か、クラブ劇場があります。
チェコよりはずっと広い日本では、かつての出版文化、テレビの発達とともに、
アニメやコミックが進化し、流布しました。
ぼくは、これらのジャンルがその良し悪しも含めて似ているなあ、と思います。
ちなみにチェコには、いわゆる長期連載マンガ、コミックのみの雑誌は存在しません。

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それぞれの国には必要な文化、発達するべき環境が整った文化があると思います。
それが偶然か、何か必然的理由があるのかは専門家ではないのでわかりませんが。
それがたまたまチェコでは舞台芸術であり、日本ではちがうものだった、ということではないか、と最近考えています。

何か参考になりましたでしょうか?

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さわ

2002.10.29 / 18:54