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悩みに向き合う勇気〜チェコ人形劇の知恵、その2
[2006.11.03] [「児童演劇」原稿]
先月号から日本のテレビ番組出演について書いている。
札幌の出身小学校で、ハードな現代に生きるこどもたちのために、
チェコで十四年かけて学んだ人形劇の「知恵」を、
サヴァイヴァル・ヒントとして手渡そう、という企画。

沢のワークショップに取り組む日本のこどもたち
収録日、一日目の授業では、「変身」をテーマに身近な素材に取り組んだ。
犬だったはずのスポンジ人形がひっくり返ってヒトになる。
閉じていた傘を開くと大きな鳥になる…モノを見る目と感覚をより自由に、
柔軟に変えてゆくためのステップだ。
さて、二日目は、実際にその「柔軟な視点」がどうやって
「生きる力」になり得るのか、という応用編。
こどもたち一人一人が今、抱えている一番大きな「悩み」を
テーマに短い作品を作る、という課題に取り組んだ。
「いつもいっしょに遊んでくれた父親が単身赴任でいなくなった。
今、自分は淋しくて仕方ない、友人もいない」
「自分は目立ちたがり屋でみんなから浮いている。でも性格は変えられない」
「人前で話せない。引っ込み思案の自分が大嫌い」
今回ぼくらに与えられた六年生のこどもたちは、想像をはるかに超えて素直で誠実だった。
彼らひとりひとりが、けっして逃げずに一番つらい悩みを表明してくれたのだ。
中には「いま、このことが母さんにバレるとたいへんな家庭問題になります、勘弁してください」と言う子もいたが、それでもその内容をぼくには個人的に告げてくれた。
その勇気に泣きそうになる…。
正直書くと、そもそもたった二日間で「チェコの知恵」や「生きるヒント」などという
大それた概念を伝えきれるとも、彼らが把握しきれるとも思っていなかった。
その上、実際のところ二日目は、三十一本の一人芝居制作という物理的ストレスもかかってくる…。
二日間の苦闘、長丁場の授業が、編集作業で三十分に圧縮され、
どこまでこどもたちの心の軌跡が描ききれているのか、期待とともに不安もあるのだが、
プロデューサや監督をはじめ、ひとり残らず献身的なスタッフに恵まれたことが
すでに何かを約束してくれている、という感じはする。
そして講師本人のアホさ加減はきっと笑えると思う。
どうか楽しんで見てください。
何かに行き詰まると簡単に「むかついて」「ぶち切れ」てしまう世の中の流れに
背を向ける強さを、その力が自分自身の中にあるということを、
こどもたちは気づいてくれたのではないか、とひそかに期待している。
番組の企画立ち上げ段階で、スタッフからこんな質問があった。
「沢さんの悩み、今までにあった大きな挫折について聞かせてほしい。
どんな事に悩み、その活路をどうやって切り開いたのか、沢さん一個人のこども時代からの生い立ちが知りたい」
ぼく自身は小学生時代、困ったときにはとにかく他人と違う解法を使おう、と考える
ちょっと変わった子どもだった。
図画の時間に、白一色の雪景色ではつまらないので色とりどりの影をつけてしまう、みたいな。
そして学期ごとの学習発表会やお楽しみ会では、仲間を集めて必ず人形劇を演じた。
いつもはそれほど目立たないのに、ある季節になると現れる人形劇演出家…
じゅうぶん変わったこどもだったのではないだろうか。
六年生のとき、ふと、いわゆる「一流」になるためには二つの道がある、と気づいた。
ひとつは誰かがすでに拓いた道を、今までの誰よりも上手に歩くこと。
もうひとつは、誰も気づかなかった道を初めて拓くこと。
この場合、拓き方が上手か下手か、は問われない。
重要なのは技術ではなく、発想だ。
自分は躊躇なく後者を、そして人形劇を拓こうと決めた。
来月号、番組出演から微妙に逸れながら、続きます。
(※課外授業ようこそ先輩 番組は2006年8月に放送されました。原稿は放送前に掲載されたものです。)
2006.11.03 / 18:46
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コメント
風待人さん、
コメントありがとうございます。
昨日は「頭山」のアニメ監督山村浩二さんとプラハ城下でお昼を食べました。
彼も「課外授業」を見てくれていて、いやぁ、この番組、そもそも地味なんだけど、いかにもちゃんとした人たちが見てくれてんだなぁ、と嬉しかったです。
プラハはもう冬だわさ、寒いわさ。
2006.11.25 / 00:22 | 投稿者 のりさわ
はじめまして!
先日の放送を観て、いろいろなことを感じさせていただきました。
私自身の表現についての興味という視点と
9歳になるわが子の抱えるコミュニケーションの課題について
また、これからの未来をになう子どもたちに、期待もし応援もしたい
という意味でも、沢さんのなさっていらした授業は
興味深く、かつ大切なメッセージがこめられていたと思います。
都合がつきましたら、ぜひワークショップに伺いたいと思っています。
いつか自分のブログで、沢さんのことをご紹介できたらいいなぁ、と思っております。
そのときは、またお知らせいたします。
2006.11.24 / 21:51 | 投稿者 風待人
上り坂アニメータあみちゃん、カキコミに緊張してます。
ははは。
アニメも芝居も、すぐに実生活や社会に役立つものじゃない、どうしても必要不可欠なものじゃない、と思われてるんだけど、だからこそ、あきらめるしかない生きる辛さや、捨ててしまうしかないみんなのため息をひろって、作品にすることができるんだ。
すぐに役立たなくたって良いじゃないか、と思う。
そんな創作、というものは、逆に作り手にとっては、生きるための松葉杖のようなもので、作って発表することでしか社会にアクセスできない、不器用な怪我人のための、唯一の開かれた回路ですね。
2007年は3月1日~3日、青山円形です。
ワークショップもあるよん。
2006.11.20 / 02:00 | 投稿者 のりさわ
こんにちは。
はじめてコメントをさせていただきます。
自分の辛さと人形劇を結びつけて作品として
昇華させる取り組みに、すごく考えさせられました。
「人と違う自分の独自性」を探して、それを
人形劇にしても面白いかな、と思いました。
これからも、すばらしい作品を期待しています。
2006.11.19 / 23:42 | 投稿者 石井あみ

